117枚目 最近話題の出来事について思う事
みなさんこんにちは。
ミスベティー代表の白川です。
これまでの忙しさから解放されたとたんに体調を崩し、1週間ほどダウンしていました。
寒暖差が激しい季節の変わり目です。みなさんお体ご自愛下さい。
さて、今回は昨今話題の食中毒事件について、私の考えを書きたいと思います。(久々の長文です。 究極にお暇なときに読んで下さい。)
お弁当の食中毒事件から始まり、和菓子屋さんや、高齢者施設、最近ではマフィン屋さんでの事件が大きな話題を集めています。
毎年食品衛生講習会に出席をして、話を聞いていれば分かるのですが、年間数十件は食中毒事件が発生しています。
不思議な物で、食中毒事件が多発する年もあれば、ほとんど発生しない年もあります。
さらに、カンピロバクター、アニサキス、セレウス菌、O157など、病原菌ごとに流行があり、その年によって偏ります。
今年は10月から11月の気温が異常に高かったので、それに伴って、食中毒事件が頻発したのだと思われます。
ただ、SNSやメディアがそのような話題を集めているので、余計に目立って、世間の不安を煽っている印象を受けます。
食中毒ではないですが、10月11月の気温が高かったので、大野町でも柿の生育が遅れて、富有柿の収穫が1月ほどずれ込んでいるようです。
このまま11月まで高温が続けば、富有柿が取れない地域になると心配する声もあるようです。
事業者の衛生管理の問題が一番ですが、異常な気温など、外的要因が重なり、食中毒が頻発していると考えると、一概に事業者叩きや、SNS、メディアで不安を煽るだけでは根本的な部分を見落としている気がします。
日本の自然環境が急激に変化する中、商習慣もそれに伴い変更していく雰囲気を醸成する必要があると思います。
今回の食中毒事件の大きな問題点から、具体的な商習慣の改善を考えてみたいと思います。
①人手不足による清掃不十分
②キャパを超えた受注
③商品の賞味期限設定と流通時の温度管理
④毎年同じ時期に受ける予約
⑤食品衛生責任者講習の在り方
上記5つ以外にも、マフィン事件の背景には、働き方・価値観の多様性やマルシェブームなど、社会学的観点からの問題点がいくつも上げられますが、今回は一般論としての①~⑤の内容に絞ります。
①人手不足による清掃不十分
この問題は本当に根深く、ミスベティーでも再三スタッフに注意していることです。
働き方改革、労働生産性を上げろと政府に散々言われた結果、少ない人数で店舗を回すことが当たり前になりました。
その背景には、最低賃金と社会保障費が上がり続け、それを価格転嫁できない状況が続いたので、利益を確保するため、余剰人員を配置せず、お客様をお待たせしてでも、最低限の人数で回すことが当たり前になりました。
この前行ったファミレスでは、お昼時のピーク時に、パートスタッフさん2人と配膳ロボット2台だけで店舗を運営していました。 究極の少人数制で若干のディストピア感さえ漂っていました。
さて、そんな究極の状況下で店舗の清掃まで手が届くでしょうか。 普通商品を提供することに手いっぱいになりますよね。
さらに、そんな状況が続けば、常に余裕がなくなり、店舗を清掃する雰囲気ではなくなっていきます。 そのうち清掃を意識する従業員がいなくなっていきます。
利益至上主義、店舗運営のみに注力するのではなく、スタッフの精神的な余裕を保ちつつ、店舗清掃や商品開発などに意識が向けられる環境を意識したいですね。
②キャパを超えた受注
未だにミスベティーでも、無茶な注文を依頼されることがあります。
このコラムを書いている前日も依頼を振られました。 もちろんお断りしましたが。
昭和の商習慣で大量に注文するから、安くしろ。的な依頼方法や、昔からの付き合いで、会社規模の大きい方が一方的に無理な受注を強要する場合があります。
一日何個まで作れるのか、他のお客様に影響を出さない範囲でどこまで余裕があるのかを常に把握し、無理の無い範囲で受注することが大切だと思います。
「これを断ったら、次から注文しないから」っと脅されても、出来ない物は出来ません。変な商品を出すくらいなら取引して頂かなくて結構です。という姿勢でやっています。
過剰な演出に見えますが、昭和からある古い組織の会社からの依頼では普通にあることです。
マフィン事件では、BtoCでしたから、単純に欲を出して、キャパを考えずに作り続けただけなので、擁護のしようがありませんが・・・
ミスベティーでは、過去に4000個ワッフル事件がありました。
一日ワッフル4000個の依頼を当時社長だった、父が受けてしまい、それに向けてみんなで必死に作ったのを覚えています。
普段よりもたくさんのスタッフをフル動員することで、人件費がかさみ、大量注文なので、売価も安く、あまり利益が出ない仕事だったのを覚えています。
後日その場で購入して頂いたお客様に評判を聞いたところ、別のワッフル屋さんかと思うくらい不味かったと言われました。 やはり丁寧に作れない商品に価値はありませんでした。
③商品の賞味期限設定と流通時の温度管理
賞味期限の設定について、過去にこのコラムで書いた記憶がありますが、簡単にまとめると
・細菌検査場で代表する商品を検査
・類似する商品や同一の製造場所では、頻繁に検査しない
・常温保存、冷凍保存など賞味期限が長い商品の賞味期限設定はどうしても曖昧になってくる
・最終的にはお店の判断で自由に賞味期限設定が可能
という点があります。
科学的根拠に基づいて、設定をしているのですが、前提条件が間違っている科学的根拠に基づいていると、今回のような事件になります。
例えば、検査段階では常温15℃~20℃で賞味期限1週間で検査した物が、物流・販売環境では常温25℃~30℃で1週間の賞味期限設定をします。
このあたりの判断が本当に難しく、普段から真夏での常温販売を対象に検査をされているお店さんなら問題ないのでしょうが、そもそも真夏で常温のお弁当とか流通に載せませんよね?という話にもなってきます。
さらに流通時の温度管理は、お店の管理外にあり、仕入れた店舗さんがこちらの指定通りに温度管理をしてくれる保証はありません。
確実に安全な時期に確実に温度管理を徹底してくれる取引先にだけ、商品を卸すという意識をお店側が持つことが大切だと思います。
どうしても卸業者を挟むと市場原理で、生の食べ物が製品として拡販されるのですが、作り手のこだわりや想いに共感してくださらない、店舗様には卸さないという姿勢を卸業者と共有したいですね。
ミスベティーはそういうスタイルで卸業者さんと接しているので、担当の方には、いつも心苦しい思いをさせています。
④毎年同じ時期に受ける予約
例年同じ時期に受ける注文というのがありますが、例年通りに商品を提供するのではなく、その年の気温や湿気に合わせて、提供方法や保管方法を考える必要があると思います。
文化祭やこども会の注文など、涼しい時期に依頼を受けることが多いので、保冷剤を付けずに渡すことが通例となっていますが、一旦立ち止まって考え、いつ食べるのか、どこに保管するのかも聞いておくと良いですね。
⑤食品衛生責任者講習の在り方
食中毒事件の後、ネットの書き込みを見ていると出てくるワードでしたね。
食品衛生責任者は、飲食店をする場合は必ず一人立てる必要があります。衛生管理の専門家ではなく、衛生管理に責任を持つ立場の人を擁立する制度です。
私が初めて受講した責任者講習は朝から夕方までびっちり講義を受けて1日をかけて食中毒や一般衛生管理の知識を学習しました。 1日で取得できます。
この制度に問題があるのではないかという書き込みが目立ちましたね。
責任者講習を受けた後は、毎年1回、食品衛生協会の各支部が開いてくれる定期講習を受講することで資格が維持される仕組みのようです。
毎年出席することで、だんだんと食中毒の原因菌の知識も身に付き、ハサップ基準の衛生管理の必要性などを実感していきます。
保健所職員さんの講習もあるので、分からないことがあれば講習会の後、聞きにいけるのですごい助かった記憶があります。
上記のように、現状あまりに簡単に食品衛生責任者になれるわけですが、毎年講習を受けることで段々と飲食のプロとして成長できるので大きな問題があるとは私は考えていません。
それよりも、各お店のプロ意識の問題が大きい気がします。
ただ、私が所属する揖斐本巣食品衛生協会もコロナ禍で非接触・簡略化が進み、テキストの配布のみで講習会の代わりになっていたり、オンラインビデオをウェブで視聴して講習会とする方向になってきました。
保健所職員さんから直接お話を聞けない状況が続くと、意識が低下するおそれがあるので、あまり良い傾向だとは思っていません。
また、一方的に話を聞くばかりではなく、お互いに取り組んでいる対策についてディスカッションするなど、意識向上の取り組みを地域ぐるみで考えていけると面白いかもしれません。
とっても長くなりましたが、最近話題のニュースについて、私なりに思うことをまとめました。
結論、「プロ意識もって、商品大切にしてください」
ということでしょうか。